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京都大学医学部附属病院 消化管外科 
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食道がんの進行度

食道がんの進行度

食道癌は食道の粘膜から発生し、はじめは粘膜内にとどまっていますが、進行するに伴って次第に粘膜下層、筋層、外膜へと達します。

また、進行する過程で一部の癌細胞は血管やリンパ管に入り込んでリンパ節に飛んだり(リンパ節転移)、肝臓や肺などの離れた臓器に飛んだりします(遠隔転移)。

どのくらいの深さまで食道癌が達しているか(壁深達度)と転移の状況から食道癌の進み具合がきまり、それにより治療方法も異なってきますので、先に述べたような十分な検査により進み具合を把握することが重要になります。

1.壁深達度

食道癌はその深さによって下図のようにTis(上皮内癌)、T1a(粘膜筋板まで)、T1b(粘膜下層まで)、T2(筋層まで)、T3(外膜まで)、T4(周囲臓器に浸潤)に分類されます。

胃癌や大腸癌は粘膜下層までの浅い癌(T1)を「早期癌」、筋層あるいはそれ以上に深くまで広がっているものを(T2-T4)「進行癌」としています。

しかし食道癌はたとえT1b程度に浅くても早くからリンパ節転移を起こすことが稀ではないのでT1のものは「表在癌」とよび、胃癌や大腸癌で転移が稀で予後が良好な「早期癌」と区別しています。

2.リンパ節転移

食道は喉頭(のど)から胃までをつなぐ、縦長の臓器です。
従って、食道がんのリンパ節転移の場合、広い範囲に転移を認める事が知られています。

以下にその代表的な場所(所属リンパ節)を示します。

  • (a.)反回神経周囲リンパ節
    声帯の動きを司り、声を出す神経は、反回神経と呼ばれ、胸部で反転して声帯へとつながります。
    食道がんの場合、この反回神経周囲リンパ節は比較的早期から飛びやすいとされています。
  • (b.)傍食道リンパ節
    食道のそばにある縦隔(胸の中)のリンパ節も比較的早期から飛びやすいとされているリンパ節です。
  • (c.)胃周囲リンパ節
    食道は、腹腔内(おなか)のなかで胃へと繋がります。胃の周りのリンパ節も転移がみつかりやすいリンパ節の一つです。
  • (d.)頸部リンパ節
    食道の上部(口に近いところ)に位置する腫瘍の場合、頸部リンパ節も転移が見つかりやすい場所です。腫瘍のある位置との位置関係や、転移の数によって、リンパ節転移の程度は診断されます。
    リンパ節転移の有無は主として、CT検査で診断しています。転移のあるリンパ節は普通の大きさ(小豆大)よりも腫れていることが多いので、腫れたリンパ節として見つけることが可能です。
    しかし、リンパ節は腫れていなくても、手術後に顕微鏡検査で転移が見つかるなど画像検査で転移が見つからなくても100%転移がないとはいえないのが現状です。

3.遠隔転移(血行性転移)

がんが進行すると、がんが血液にのって他臓器に転移することがあります。これを遠隔転移と言います。

食道がんの場合、肺 肝臓 骨などに転移することがあります。

遠隔転移の有無は主として、CT検査で診断しています。
肺転移、肝転移も5~10mm大以上のものであれば見つけることができます。

4.進行度

これまで述べた、壁深達度、リンパ節転移、遠隔転移の有無により、食道癌の進行度は、日本食道学会の分類にしたがって、下図のように「I, II, III, III, IVa, IVb」の6段階に分類されます。

治療をした場合の食道癌の治りやすさも進行度によって違ってきます。