すべては患者さんの笑顔のために ~京都大学消化管外科~
京都大学医学部附属病院 消化管外科 
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高度肥満症

肥満と肥満症

肥満とは脂肪組織が過剰に蓄積した状態を指します。

日本ではbody mass index (*BMI)が25以上のかたを肥満、35以上のかたを高度肥満とよび、そのうち肥満が原因となる健康障害を有するかたを、それぞれ肥満症、高度肥満症と診断しています。
*BMI; 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

肥満症診断のフローチャート

 

肥満に起因する健康障害は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などのいわゆるメタボリックシンドロームと関連する病態から、関節疾患、睡眠時無呼吸、月経異常など多岐にわたり、放置するとやがて心筋梗塞や脳梗塞といった危険な病状を呈するようになります。

内臓脂肪蓄積から生じる疾患

 

2016年の段階で、日本で高度肥満とよばれるかたの割合は、全人口の約0.6%にのぼるとされ、食生活の欧米化などに伴い、肥満あるいは肥満症の患者さんの割合は年々増加しています。

肥満症は、それ自体が、環境因子、ホルモンや代謝バランスの障害、精神的因子などが複雑に関係して発症するとされる“疾患”と考えられ、減量によって健康障害の改善が期待できることから、医学的に積極的な治療の適応となります。

 

肥満症治療の実際

肥満症の治療は、まずは食事療法、運動療法を中心とした内科療法から開始します。

一般的には糖尿病・内分泌代謝・栄養学を専門とする内科医および栄養士が窓口となって、食事療法と運動療法を開始します。

しかし、BMIが32を超える状態で、6か月以上内科的な治療を続けても減量効果が得られない肥満症の場合、外科的な治療、すなわち減量手術を検討することになります。

2016年4月より、減量手術の術式の一つとして、日本においても後述する腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が保険診療で行えるようになりました。

しかし、減量手術については、手術のレベルだけでなく、その適応決定や周術期管理、術後のケア等についても、複数の医師、看護師、薬剤師、栄養士の介入が必要になります。

そのため、いまなお厳しい施設基準を満たした限られた施設でしか減量手術は行われていません。以下、当院における肥満症治療の実際、治療の特色などにつき記載させていただきます。

 

京都大学消化管外科における肥満症治療の特色

まずは糖尿病内分泌栄養内科を受診していただき、専属栄養士のサポートのもと、食事療法・運動療法を中心とした内科的治療を開始します。

もちろん他院で内科治療を行っても有効な減量効果が得られていない患者さんに対しても、積極的に診察させていただきます。

肥満症の治療は、なによりも継続的に行うことが大切です。

当院では、肥満症治療を開始した患者さんについて、定期的なカンファレンスを開いています。

具体的には、糖尿病内分泌栄養内科・消化管外科・精神科・疾患栄養部門・麻酔科・手術部看護師・病棟看護師がひとつのチームとなって合同で話し合い、患者さんにとって常に適切な治療を行えるようにサポートします。

当院における肥満症治療カンファレンスの様子

 

肥満症に対する外科治療が遅れている京都府の他病院に先駆けて、2021年2月より、京都大学消化管外科において減量手術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術)を受けていただける環境を整えました。

すでに手術を受けていただいた患者さんも、良好な術後経過をたどり、期待した減量効果が得られています。

 

肥満症に対する外科治療 -腹腔鏡下スリーブ状胃切除術-

本術式は、胃を80%程度切除し、胃の容量を約100mlまで減少させることで、食事摂取量を減少させ、以後の減量効果を期待する治療法です。

スリープ状胃切除術

 

手術自体がシンプルで、現在減量手術としては世界中で最も行われている術式です。

胃から分泌されるグレリンという食欲増進ホルモンが減少することも本術式の特徴です。

腹腔鏡下に行うため、腹壁の傷も小さく(5)、術後翌日には歩行・飲水が可能になります。

実際の手術創部と手術風景

 

実際の手術時間は2-4時間程度で、術後経過が良ければ1週間程度で退院していただくことになります。

最近の医学研究から、肥満症の原因は複雑であることがわかり、放置すると生命を脅かす危険な合併症を引き起こすため、医学的な介入によって積極的に治療すべき疾患であると考えられるようになりました。

現在肥満症に対する治療ガイドラインの中で、外科手術も含めた集学的治療を推奨する具体的な方針が示されています。

わたしたちは、高度肥満症を克服して健康な生活を送りたいと強く願う患者さんを外科的立場からサポートしたいと思っています。

もちろん、手術を受けさえすれば簡単にやせられて、絶対にリバウンドしない、糖尿病が再発しないということはありません。

大切なことは、患者さん本人が自身のライフスタイルを変えるための努力を続けることであり、減量手術はそのための一治療法にすぎません。手術後の栄養管理や運動、精神面でのケアは手術と同じくらい重要です。

減量外科治療においてはチーム医療がとても重要ですが、患者さん自身がチームの中心であると認識して下さい。京都大学医学部附属病院では、できる限り時間をかけ、他科とも十分な連携を取って、丁寧な治療を行いたいと考えています。

肥満で悩んでおられる方の来院をお待ちしています。